宇宙マイクロ波背景放射(CMB)イメージ

BICEP3望遠鏡の精密部品加工事例

CMBを観測するためのBICEP3望遠鏡のミラーをTDCが製作しました

旭化成吉野先生のノーベル化学賞受賞という明るいニュース!とっても嬉しいですね。

今回のノーベル物理学賞は、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の観測から宇宙の成り立ちに関する理論を提唱されたジェイムス ピーブルス先生が受賞されました。

宇宙は138億年前にビッグバン大爆発で誕生し、膨らみながら冷えていったと考えられています。宇宙の成り立ちから38万年後になって、それまで閉じ込められていた「光」が飛び交えるようになり、この光の名残りが「宇宙マイクロ波背景放射」(CMB)と呼ばれる電磁波です。
ピーブルスさんは、宇宙が誕生した直後の光の名残から、宇宙の成り立ちを理論的に読み解き、それにより、星や私たちといった目に見える物質は宇宙の5%ほどに過ぎず、残りのほとんどはダークマターやダークエネルギーだという新たな知見につながりました。

原初宇宙の急速な膨張により、重力波が発生し宇宙マイクロ波にわずかな歪みを与えました。この「歪み」を計測することで、宇宙の成り立ちに迫る研究施設が南極にある「BICEP3」望遠鏡です。

BICEP3望遠鏡でこの電磁波の歪みをキャッチするための特殊なミラーを弊社(TDC)で作りました!

だいぶこじつけましたが、ピーブルス先生のノーベル賞受賞によって「宇宙の成り立ち」という、日頃の自分たちの暮らしとは遠く感じられる(けれど根源をなすもの)を多くの人が身近に感じるきっかけになったらうれしいです。

かなり遠いところでほとんどゼロに近いですが、ほんのわずかに関われたことがうれしいです。

BICEP3望遠鏡のミラーへかけた超精密加工のこだわり

今回の依頼のきっかけは、アメリカの展示会でのこと。スタンフォード大学の教授がTDCの鏡面製品を見て、ご依頼をいただきました。

CMBは地球にわずかしか降ってこないため、それを検出するためには超精密な望遠鏡が必要となり、構成する部品やミラーも高精度な加工が重要となります。

今回TDCで手掛けた特殊なミラーは、結晶表面にコーティングがされているもの。形状管理とコーティング膜厚管理の2つの要求仕様を同時満たすために自社開発の専用工具を用いて微調整をしながらの研磨をおこなったほか、加工途中に形状・厚みの精密計測を繰り返し、TDCの技術力を結集することで実現できた精密部品のひとつです。

TDCの強みは、何度もチャレンジしてくれる人が現場に多いことです。例え技術的に難しいと思われるご依頼でも、諦めることなく「次こそ、うまくいく」「この方法はどうだろう」「工程を変えてみよう」と何回もトライすることで、今回のような超高精密部品の製作も可能となっています。

BICEP3望遠鏡とは

南極に観測用望遠鏡を設置するというプロジェクト「BICEP」。一言でいえば、宇宙の起源であるビッグバンの残光・宇宙マイクロ波背景放射(CMB)を観測することが目的です。

一般的な宇宙論として、宇宙の誕生直後には極めて短時間にすさまじい膨張(インフレーション)を起こしたと考えられています。それに伴って原始重力波が発生し、この重力波がCMBに「Bモード偏光」と言われるよじれたパターンを作ったとされています。

このBモード偏光を観測・検出しようというプロジェクトで使われるのが、BICEP望遠鏡です。

2006年から稼働を続け、2014年には検出素子を512個に増やしたBICEP2による第二弾プロジェクトが開始。2015年にさらに素子を2560個に増やし、精度と感度を上げた後継機が「BICEP3望遠鏡」となります。

CMBとは

cosmic microwave background radiationの頭文字を取った略称のこと。日本語では「宇宙マイクロ波背景放射」と呼ばれ、ビッグバン大爆発で宇宙が誕生した名残の光(電磁波)のことを指します。

宇宙は138億年前から膨らみながら冷えていったとされ、38億年前より閉じ込められていた光が飛び交うようになります。宇宙では遠いほど過去を見ることになるため、CMBを観測するということは宇宙の成り立ちを解明していく上で決定的な証拠の一つとなるのです。

また、1989年にNASAのCOBE衛星が打ち上げられ、これまで予想されていたCMBは黒体放射であるということが証明されたほか、 温度異方性も発見。これには多くの宇宙論パラメータの情報が含まれ、まさに宇宙構造の種子となるものの発見となり、後に人工衛星や気球観測といったといったさまざまな方法でCMBの観測が活発に行われるようになるきっかけを与えました。

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