
溶射後の研磨加工
このページでは、溶射加工および溶射後の研磨加工について解説をします。
Contents
溶射とは
溶射とは、熱を加えて溶融・半溶融したセラミックスや金属、サーメットなどの素材を噴射し、基材表面に機能皮膜を形成する加工技術となります。
溶射の目的・用途
溶射は、使用する材料を選択することにより、以下のような機能皮膜を形成することができます。
- 防錆
… 耐久性などにも影響のある発錆を防ぐことができる処理です。 - 防食
… 高温やさまざまな腐食環境による酸化や腐食を防ぐことができる処理です。 - 耐摩耗
… 摩擦やすり減りなど、あらゆる摩耗に対する耐性を高めることができます。 - 耐熱・遮熱
… 高温の環境下において、形や機能を維持することができる処理となります。 - 耐衝撃
… 外部から受ける衝撃に対する耐久性を高めることができます。 - 耐薬性
… 対象物が薬品と接触した際の化学反応などを防ぐことができます。 - 電気絶縁
… 電気絶縁性と呼ばれる電気を通さない性質を持たせることができます。 - 寸法復元
… 摩耗や損傷、すり減った部材の補修や寸法を復元することができます。
溶射は半導体分野をはじめ、宇宙、航空、発電、印刷、自動車の部品など、さまざまな分野に用いられる技術です。
製造業においては基盤たりうる技術であり、現在も日々、新たなコーティング技術が開発されています。
溶射の種類
溶射は熱を加える熱源の種類によって、「ガス式溶射」と「電気式溶射」に大きく分類されます。
さらに加熱の方法によって細分化がされ、溶射に用いられる材料や形態、対象物の種類、目的などによって最適な方法が選択されます。
代表的な加熱形態は以下となります。
熱源の種類 | 加熱形態 | 概要 |
ガス式溶射 | フレーム溶射 | 燃料と酸素ガスによる燃焼炎を熱源とし、熱によって皮膜を形成する方法となります。 |
高速フレーム溶射 | フレーム溶射の燃焼エネルギー圧を強め、高速で基材に衝突することで密度の高い皮膜を形成する方法となります。 | |
爆発溶射 | アセチレンと酸素による燃料ガスを爆発燃焼させることで、密着性の高い皮膜を形成する方法となります。 | |
電気式溶射 | アーク溶射 | 2本の金属線/ワイヤーの先端にアーク放電を発生させ、放電エネルギーで溶融した材料を圧縮空気で吹き付ける溶射方法となります。 |
プラズマ溶射 | 高温のプラズマジェットにより、溶射材を音速を超える速度で吹き付ける溶射方法となります。 |
溶射の工程
1.溶射をおこなう対象物の洗浄
対象物と溶射材を結合させやすくする目的や対象物が汚れてしまうことを防ぐために、前工程として洗浄作業をおこないます。
洗浄には、鉱物油などの汚れを除去する「溶剤洗浄」や「水溶性洗浄」、また加熱による油脂類の除去がおこなわれます。
2.粗面化処理(ブラスト)
粗面化処理(ブラスト)とは、その名のとおり対象物の表面に粗面を生み出す工程となります。
対象物の表面は酸化被膜や錆、塗膜などが付着しています。
これらを削り落とすことで表面を粗面化し、溶射材との密着や固定化がされやすくなります。
3.皮膜形成・溶射
目的・用途によって、前述の「ガス式溶射」「電気式溶射」をおこないます。
4.熱処理
必須の工程ではありませんが、皮膜の強度や密度、耐食性、硬さといった特性を向上させる目的でおこなわれる場合があります。
5.封孔処理
封孔処理では、皮膜内に含まれる細かな気孔を埋める工程となります。
気孔は防食などを目的とした溶射の際に、大きな欠陥につながってしまう可能性があります。
また、封孔剤により気孔が密閉されるため表面がなめらかになり、溶射皮膜が長く保たれる効果にも期待ができます。
6.仕上げ加工
溶射したままの皮膜表面はザラザラとし、粗い状態となります。
使用目的によって精密仕上げ加工、より正確な寸法精度、平滑性を高めるため、切削加工や砥粒加工、研磨加工をおこないます。
溶射後の研磨の必要性
溶射処理を施した場合、表面がザラザラな状態となるため、研磨加工までおこなうのが一般的な工程となります。
- 溶射後の状態は面が粗くなりますが、研磨加工を入れることで鏡面に仕上げることが可能です。
- 鏡面仕上げの他、溶射膜の厚みのバラツキを抑えるなど、希望厚みに仕上げる目的でも研磨加工が有効です。
- あらかじめベースになっている基材の平面度や平行度を出しておくことで、溶射後の研磨加工にて平面度・平行度・寸法公差・面粗さといった複合的な精度を、よりハイレベルに仕上げられます。
加工実績のある溶射膜材質
- Al2O3
- フォルステライト
- コージュライト
- ステアタイト
- インコネル
- モネル
- スピネル
- ハステロイ
- WC超硬
- フッ化イットリウム(YF3)
- 酸化イットリウム(Y2O3)
- MCrAlY溶射
ほか数十種類
さまざまな種類の溶射品の加工実績がございます。
溶射後の精密研磨加工はTDCにご相談ください
溶射加工の後工程では、研磨をおこなうことが一般的となります。
昨今では、溶射後の研磨にもさらなる高精度な面粗度を求められるお客さまやニーズが増え、弊社に依頼されるケースも増えております。
溶射後の精密研磨をご要望の際は、お気軽にお問い合わせください。
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