ナノテラス

[ナノテラス Vol.1]
次世代放射光施設「ナノテラス」とは? ――ナノの世界から広がる可能性

2024年度の運用開始に向け整備が進んでいるナノテラス(NanoTerasu)。さまざまな物質を電子レベルで解析できる放射光施設として、国内外から注目を集めています。
私たちティ・ディ・シーは、東北大学多元物質科学研究所が主催する「多元研イノベーションエクスチェンジ」に2017年から毎年参加しており、ここでの出会いがナノテラスの活用を考えるきっかけとなりました。

ナノテラスと同じく宮城県にある私たちティ・ディ・シーでは、さらなる品質の向上を目指し、今後ナノテラスを活用させていただく予定です。
ティ・ディ・シーとナノテラスとの関わりについては、下記の記事もあわせてご覧ください。

このページでは、改めてナノテラスについてお話したいと思います。

ナノテラスとは?

ナノテラスとは一体どんな施設で、どんなことができるようになるのでしょうか?
今回は大きく3つのポイントを紹介させていただきます。

ナノの世界を可視化する

ナノテラスは、東北大学 青葉山新キャンパス内(宮城県仙台市)に建設された次世代放射光施設です。放射光施設とは、いわば「大きな顕微鏡」。ナノテラスでは、電子加速器によって光速近くまで加速された電子を曲げたときに生まれる高輝度・高指向性の放射光(その明るさはなんと太陽光の10億倍以上)を使うことで、物体の構造や機能をナノレベル(100万分の1mm)で可視化できるのだそうです。

今年度から運用開始予定となっており、昨年12月には放射光を実験室に取り込む「ファーストビーム」に成功したこともニュースとなりました。
ナノテラスでは、このビームラインを最大28本整備できるように設計されており、運用開始までに10本のビームラインの整備が予定されています。

世界トップレベルの軟X線を発生

ナノテラスで用いられる放射光は、X線のなかでも比較的波長の長い「軟X線」。軟X線は、物質の表面、また電子状態やその変化を調べられるのが特徴で、ナノテラスではこれまで国内にあった施設の実に約100倍の強度(3GeVのエネルギー)で軟X線を発生させることができます。

波長の短い「硬X線」の放射光を使った代表的な研究施設としては、兵庫県に「スプリング・エイト(SPring-8)」がありましたが、ナノテラスによって、次世代型の軟X線領域においても世界最高水準の放射光施設が日本にできることとなります。
これほどの規模の施設でありながら、量子科学技術研究開発機構(QST)発行の資料によれば、国内の既存大型施設に比べ10分の1の省エネ運転ができるというところも驚きですね。

ナノテラスの軟X線放射光を用いれば、これまで見ることができなかった超微細な世界をデータ化できるようになるため、新しい素材を開発したり、高性能なエネルギー材料を開発したりといった、さまざまな最先端の研究やイノベーションに貢献することが期待されています。
工業分野に限らず、食べ物、農業、医療などの分野でも活用されていくということで、ナノテラスでこれからどんな発見が生まれていくのか、今からとても楽しみです。

「コアリション」による民間との連携

ナノテラスでは、「コアリション(有志連合)」と呼ばれる、産業界と学術界の連携の仕組みを日本で初めて取り入れています。コアリションのメンバーになると、放射光の利用経験がない民間の企業や大学でも、コアリション用に確保されたビームラインを用いて実験やデータ分析を行うことが可能です。

加えて、ビームラインの利用の際には、共に課題に取り組んでくれる研究者とのマッチングを行い、放射光の知識がない状態でもしっかりとサポートを受けられるとのこと。企業などから持ち込まれた課題が新たなテーマとなり、研究開発が加速することが期待されています。

これまで活用することが難しかった最先端の解析を、当社のような中小企業などでも取り入れられるようになる、というのがこのコアリションの最大のメリットです。

ナノテラスを活用して、ナノの世界をもっと身近に

今年度、稼働を開始するナノテラス。当社では稼働開始と同時に実験開始をしようと鋭意準備中です。
はじめて利用しての感想など、またご紹介したいと思います。

【参照】
NanoTerasu公式サイト

●まなびの杜
「NanoTerasu(ナノテラス)への期待」

●国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構(QST)
「3GeV 高輝度放射光施設 ナノテラス」

●日経ビジネス
「イノベーション創出で企業の競争力強化に貢献
次世代放射光施設『Nano Terasu』」

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