次世代放射光施設での平滑性評価について
2023年東北大学の青葉山キャンパス内に完成予定である「次世代放射光施設」。その周辺には産学共創の「サイエンスパーク」も整備される予定となっています。
私たちの様な中小企業も活用できるとのことなので、そのための準備・助走として放射光施設にて実験を行いました。
Contents
放射光とは?
放射光とは、シンクロトロンとよばれる円形の加速器により光速近くまで加速された電子が、磁場によって曲げられると発生する電磁波のことです。
なかでもX線は物質を透過し、ナノスケール(原子や分子の大きさ)でモノをみることができます。
太陽光の10億倍以上明るい放射光は、ナノの世界をみるツールとして様々な分野で役立てられています。
放射光の日本での活用事例
日本では、材料科学をはじめとする生命科学やエネルギー・環境科学、あらゆる産業で放射光がかねてより活用されています。
最先端の放射光施設である「SPring-8」は、建設から20年が経過しています。
放射光の海外での活用事例
日本での産業活用の成功に刺激され、海外でも数多くの国々で最新技術を搭載した放射光施設が建設されています。
技術開発競争は激化し、光の明るさで日本の技術を100倍上回る施設も登場してきているほどです。
放射光施設とは?
リング型の加速器の中から放射光を様々な実験装置を備えたビームラインに誘導して、解析や評価を行う施設です。
リング型の施設をぐるぐる回すことで加速させ、それを超強力な磁石で曲げ、取り出した光を私たちの暮らしを便利で快適にするために使っていこう、という最先端の施設です。
TDCが放射光施設で行った実験
「GISAX小角散乱法を用いた表面平滑性とX線散乱の関連に関するフィジビリティスタディ」
兵庫県のSPring-8にて、12.4 keVのX線を用いて試験片に浅い角度(小角)でX線を入射して散乱光を観測しました(この時の入射角度は入射角度:0.05°、0.1°、0.15°、0.2を用いました)。
試験片は銅やステンレスの平面基板を研磨して様々な表面粗さを作り分けたものを用意しました。
Ra10nm以下(ファイナル仕上げ)、Ra1nm以下(スーパーファイナル仕上げ)の表面にX線をあて、表面粗さの評価を行いました。原理は以下の図のようになります。
ザラザラしていればX線像は散乱し、ピカピカしていれば散乱しない、というわけです。
放射光施設での実験結果
以上のように、ナノオーダーでの表面状態の変化をX線で評価することができました。
TDCでは、測れる限界は作れる限界。と考えています。これからもTDCのモットーである「できないと言わない」加工を突き進めていくためには、測定方法も追及していく必要があると考えていて、今後高まるサブナノオーダー、ピコオーダーの表面精度実現に向けて、新たな評価手法として放射光を用いた解析を検討しています。
お客様により高品質をお届けするために、身近な場所、仙台市にできる世界的に最先端研究施設、次世代放射光施設の活用を目指しています。
参照:東北大学「サイエンスパーク」内にできる最先端の可視化ツール