ダイヤモンド半導体のプラズマ援用研磨
このページでは、いま注目を集めるダイヤモンド半導体に関する研究の詳細と、ダイヤモンド半導体の基礎情報を解説します。
ダイヤモンド半導体・ダイヤモンド基板の研究にTDCも参画
TDC(株式会社ティ・ディ・シー)では、大阪大学、産業技術総合研究所とともに、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)様よりA-STEPのご支援を受け、人工ダイヤモンドに対する新たな研磨手法の技術開発に取り組んできました。
物質中でもっとも硬いダイヤモンドを研磨するにあたって従来一般的だったのが、「ダイヤモンドをダイヤモンドで磨く」という方法です。
しかし、スカイフ研磨と呼ばれるこの方法のデメリットは、高負荷・高温の加工となってしまうこと。ダイヤモンドの砥粒を用いて力ずくで削るため、表面にダメージが入りやすくなり、基板が割れる可能性もありました。
そのため、シリコン(Si)ウエハなどと同等の薄く大きい形状の基板に対応することが難しく、ダイヤモンドを半導体・基盤に用いるうえでの課題となっていました。
また、製造上の問題として、ダイヤモンドはその硬さゆえ研磨加工に非常に長い時間が掛かるという点も挙げられます。
これらの課題を解決する方法として、我々のグループでは「プラズマ援用研磨」を開発。
研究を進めるなかで、ダイヤモンドよりも軟質な石英ガラス製の回転定盤に、アルゴン+酸素プラズマを照射しダイヤモンド基板を押し当てて研磨することで、低研磨圧力でも高能率に良好な表面粗さが得られることを発見し、20 mm角という大面積モザイク単結晶ダイヤモンド基板を、10μm/h以上のレートで研磨することに成功しました。
プラズマ援用研磨で加工することにより、従来よりも飛躍的に高能率(短時間)かつ低負荷(割れやキズの回避)で磨くことが可能となっています。
なお、これまでの研究成果は世界的な科学雑誌『Scientifc reports』にも掲載されております。
Scientific reports(英文):https://www.nature.com/articles/s41598-020-76430-6
大阪大学release(和文):プラズマで実現!ダイヤモンドを傷つけず・素早く・磨く – リソウ (osaka-u.ac.jp)
2021年9月には、『プラズマを援用した大面積単結晶ダイヤモンド基板の高能率ダメージフリー研磨技術の開発』により、第41回(2021年度)の精密工学会技術賞(JSPE Technology Award)を受賞しました。
今回の賞はTDC(ダイヤモンド基板研磨の事業化)、大阪大学(プラズマ援用研磨技術の開発)、産業技術総合研究所(大面積モザイク単結晶ダイヤモンド基板の開発)の3グループが共同開発した成果が技術賞の受賞にふさわしいものと評価され、大阪大学の山村教授、 産業技術総合研究所の山田英明氏 、TDC代表の赤羽優子・技術者2名が共同受賞したものとなります。
TDCでのダイヤモンドの精密研磨事例
弊社ではダイヤモンド基板研磨の受託加工を承っております。
2024年現在、プラズマ援用研磨に加え新たな研磨方法も開発し、加工サイズは~70mm角、面粗さはSa0.1nmオーダーを実現。
パワーデバイスやヒートシンク、あるいは光学窓材として用いるうえで十分なレベルの表面粗さが得られております。
最新のダイヤモンドの精密研磨加工については、以下のページもご参照くださいませ。
>>ダイヤモンド半導体・ダイヤモンドウエハの精密研磨
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ダイヤモンド半導体・ダイヤモンド基板とは
ダイヤモンド半導体(ダイヤモンド基板)とは、人工ダイヤモンドを使用した半導体のことを指します。
これまで、技術的に実現が不可能とされていたダイヤモンドを使用した半導体ですが、近年の研究・開発によりダイヤモンド薄膜の合成など基礎技術が発展し、実用化の可能性が開かれてきています。
ダイヤモンドはシリコンやシリコンカーバイド(SiC)などの従来の半導体材料と比較し、低消費電力や絶縁耐圧性能、熱伝導率などに優れているため、研究開発が盛んになってきている分野となります。
半導体材料として注目の素材であるダイヤモンド
ダイヤモンドの熱伝導率は、銅の約5倍。屈折率や硬度はあらゆる物質の中でも最高レベルとなります。そのため、これまでにもダイヤモンドは宝石・装飾品としてだけではなく、素材を削る工具として用いられてきた時代もありました。
ダイヤモンド半導体が実用化されれば、電気自動車や電車を動かすパワーデバイスの電力損失を劇的に低減でき、ヒートシンク・放熱用基板の冷却システムも不要となるため省スペース化と軽量化にも期待ができます。
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