窒化ガリウム(GaN)の特徴・用途 | 加工事例
次世代パワー半導体材料である窒化ガリウム(GaN)の特徴や用途、加工例などについて説明します。
Contents
窒化ガリウム(GaN)とは
窒化ガリウムはガリウム(Ga)と窒素(N)の化合物で、「GaN」「ガリウムナイトライド」とも呼ばれる半導体材料です。
半導体は自動車や家電などの電気機器の制御に必要な部品で、現在ではシリコン(Si)が多く使われています。
近年、温室効果ガスの排出をゼロにする取り組みであるカーボンニュートラルの重要性が高まっていますが、カーボンニュートラルの実現には電気機器の消費電力削減や自動車の電動化が必要です。
そこで、従来のシリコンよりも優れた特性を有する窒化ガリウムやシリコンカーバイド(SiC)などの化合物半導体が、次世代を担う半導体として実用化されつつあります。 規模がさらに大きくなることが予想されます。
窒化ガリウム(GaN)の特徴・特性・性質
窒化ガリウムは、バンドギャップ(※)が3.39eVで、シリコンの1.12eVに比べて約3倍の数値を有しています。また、材料が硬くて安定した結合構造をもち、高い熱容量と熱伝導性に優れているのが特徴です。
※半導体におけるバンドギャップとは、価電子帯から伝導体のエネルギー差(禁制帯)のことを指します。バンドギャップが大きい半導体は、絶縁破壊電界強度が高くなり、高電圧や高電力に対応できるようになるほか、エネルギーの高効率化が期待できます。
窒化ガリウム(GaN)の用途
窒化ガリウムは、スマートフォンやパソコンの充電器、電車のモーター制御、太陽光発電などに用いられているパワー半導体の材料として実用化されています。
また、2025年頃にはサーバー内電圧変換器、2030年頃にはデータセンター用電源などにおける需要の拡大が予想されています。
パワー半導体の素材として注目される窒化ガリウム(GaN)
パワー半導体は、電力の変換や供給などを行う半導体のことで、大きな電流や電圧を扱えるのが特徴です。
パワー半導体が使われている代表的な製品として、ダイオード・トランジスタ・ICなどがあります。これらの製品は、交流を直流にする、直流を交流にする、電流を増幅するなどの用途で活用されており、私たちの身の回りにある電化製品への電力の変換や供給を行います。
窒化ガリウムは、次世代で活躍するパワー半導体として注目されている材料で、従来使われていたシリコンに比べて省エネ性能の向上が期待できるため、今後市場の規模が拡大すると予想されています。
次世代パワー半導体は、窒化ガリウムのほかに、シリコンカーバイドが代表的です。次世代パワー半導体は、従来の半導体として多く採用されているシリコンよりもバンドギャップが広いため、「ワイドバンドギャップ半導体」と呼ばれることもあります。
パワー半導体GaN・SiC・Siの性能比較
ここでは、パワー半導体の窒化ガリウム(GaN)・シリコンカーバイド(SiC)と、シリコン(Si)の特性の違いについて解説します。性能特性の比較表は以下の通りです。
【GaN・4H-SiC・Siの性能特性の比較表】
物質 | 窒化ガリウム(GaN) | シリコンカーバイド(4H-SiC) | シリコン(Si) |
バンドギャップ(eV) | 3.39 | 3.26 | 1.12 |
電子移動度(cm2/Vs) | 2000 | 1000 | 1350 |
絶縁破壊電界(MV/cm) | 3.3 | 2.8 | 0.3 |
電子飽和速度(cm/s) | 2.7×107 | 2.2×107 | 1.0×107 |
熱伝導率(W/cmK) | 2 | 4.9 | 1.5 |
参照元:東京エレクトロンデバイス株式会社
https://www.inrevium.com/pickup/gan-power-semiconductor/
窒化ガリウムは、従来の半導体材料であるシリコンと比べて、バンドギャップが3倍、絶縁破壊電界が11倍あるため、高熱下での動作に対応するほか、高耐圧性を有しています。また、省エネ性能に優れているのも特徴です。
シリコンカーバイドは、窒化ガリウムと同じ次世代パワー半導体材料の一種です。Si原子とC原子の位置の組み合わせの違いで、6H-SiCや4H-SiCなどの呼称があり、白物家電などのパワー半導体では、4H-SiCが採用されています。
窒化ガリウムとシリコンカーバイドを比較すると、窒化ガリウムの方が電子移動速度と電子飽和速度の数値が高いぶんスイッチング特性が高く、スイッチング電源をはじめとした小型部品・高周波の用途に適しています。
一方で、シリコンカーバイドは、窒化ガリウムと同様に絶縁破壊電界が高いものの、熱伝導率は窒化ガリウムよりも高い数値を示しており、モーター駆動などの高耐圧・大電流の用途で採用されています。
シリコンカーバイドの基礎知識について知りたい方は「SiCの研磨加工」の記事をご覧ください。
TDCにおける窒化ガリウム(GaN)の加工事例
弊社では~6インチサイズで、窒化ガリウムウエハやエピタキシャル膜の研磨実績がございます。
またパワー半導体として用いられているGaN on SiやGaN on GaNウエハの研磨も可能です。
1枚~対応可能ですのでお気軽にお問い合わせください。
その他材質についての加工実績は、下記ページに掲載していおります。
あわせてご覧ください。
>>TDCの表面粗さ・面粗度実績
窒化ガリウム(GaN)の加工はTDCまでご相談ください
窒化ガリウムは、次世代パワー半導体で採用されている材料のことで、従来使われていたシリコンに比べてエネルギー効率に優れています。ただし硬さがあり、機械的に安定している材料のため、加工が難しい傾向にあります。
TDCでは、材質に応じた加工ノウハウと、これまで蓄積された加工技術により、窒化ガリウムを高い精度で加工いたします。
他社で断られた窒化ガリウムの加工案件も、ぜひ一度TDCにご相談ください。
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