世界的研究機関PSIの精密実験に採用 ─ 長尺金属箔の鏡面研磨
スイスの国立研究機関PSI(パウル・シェラー研究所)では、宇宙誕生の謎に迫る精密実験が進められています。
本記事では、この実験の科学的な背景と、長尺金属箔の超精密研磨にてTDCが技術協力させていただいた事例をご紹介します。
【PSI(パウル・シェラー研究所 / Paul Scherrer Institute)とは】
自然科学・工学分野におけるスイス最大の研究機関。
スイス北部・アールガウ州にキャンパスを構える同機関では、シンクロトロン光源(SLS)、核破砕中性子源(SINQ)、ミューオン源(SμS)、X線自由電子レーザー(SwissFEL)という4つの大型研究施設を敷地内に有しており、この組み合わせは世界でも唯一とされる。毎年60カ国以上から約3,000名の研究者が訪れ、実験を行っている。
PSI公式サイト
【ご利用いただいているTDCの技術】
精密鏡面フォイル/長尺金属箔精密ポリッシング
Contents
宇宙にあるものはすべて「物質」からできている
私たちの体、地球、星――宇宙に存在するあらゆるものは「物質(matter)」でできています。物質を構成する最小レベルには電子や陽子といった粒子があり、それぞれの粒子には”鏡の中の分身”のような「反物質(antimatter)」が存在します。
物質と反物質が出会うと、お互いが消えてエネルギー(光など)へと変わります。
これが「対消滅(annihilation)」と呼ばれる現象です。
例:電子(e⁻)+ 陽電子(e⁺) → γ線(光)

宇宙最大級の謎:「なぜ物質だけが残ったのか?」
ビッグバン直後には、物質と反物質がほぼ同じ量だけ生まれたと考えられています。もし完全に同じ量であれば、宇宙は対消滅によって光だけになっていたはずです。ところが現実の宇宙には、ほとんど物質しか存在していません。
これは「物質・反物質非対称性」と呼ばれる物理学の根本的な謎です。現在有力な考え方は、ビッグバン直後にほんのわずかだけ物質が多かった――およそ10億個に1個の差――というもの。その”わずかな生き残り”が、やがて星や銀河となり、私たち自身へとつながったのではないかと言われています。
では、なぜこの微妙な偏りが生まれたのでしょうか?
その解明に向けて、世界中で下記のようなさまざまな研究が行われています。
- 中性子と反中性子の性質を極めて精密に比較する実験
- CP対称性の破れ(粒子と反粒子でふるまいがわずかに違うこと)の探索
※「CP対称性の破れ」についての研究では、小林・益川理論が2008年のノーベル物理学賞を受賞しています。
こうした研究の積み重ねにより、宇宙の成り立ちを理解するためのピースが少しずつ揃いつつあります。
スイス・PSIで進む「超低速中性子」の精密実験
「物質・反物質非対称性」の謎に迫る研究の最前線のひとつが、スイスのPSIです。PSIでは世界トップレベルの装置を用いて、「超低速中性子(Ultra-Cold Neutron, UCN)」の研究が進められています。
〈超低速中性子(UCN)の特徴〉
- 運動エネルギーが極めて低い
- 速度は数m/s程度と、人が歩く速さに近い
- 物質表面で反射・閉じ込めが可能
- 磁場・重力でも制御できる
これらの性質のおかげで、通常の中性子では難しい長時間の貯蔵・観測が可能になります。PSIではUCNを容器に閉じ込めて、
- 中性子寿命の精密測定(何秒で崩壊するか)
- 中性子の電気双極子モーメント(EDM)の探索
など、根本的な物理法則に迫る超高精度の実験が行われています。
UCNを用いた実験では、中性子が接触する部品の表面状態が測定結果に影響を与えるため、使用される金属箔には極めて高い表面精度が求められます。
TDCの長尺金属箔の鏡面研磨がPSIの実験に採用
今回、このPSIの最先端の実験プログラムに、TDCの精密研磨技術を採用していただきました。
きっかけは2024年、ウェブサイト経由でいただいたお問い合わせです。長尺金属箔を精密研磨できるメーカーを探されていたPSIの研究チームから、ご連絡をいただきました。
最初のご依頼では支給材にてご要望の仕様に精密研磨を実施。良好な評価をいただきました。その後、2025年に仕様変更を伴う2度目のご依頼をいただき、大面積金属箔に対し全面にわたって表面粗さシングルナノオーダーの鏡面に仕上げました。
2度目のご依頼においては、材料についても当社にて調達。研磨から梱包、スイスへの輸送まで一貫して対応させていただきました。
納入した製品はPSI側からご評価をいただいており、新たに別の部品についても追加の研磨をご依頼いただくなど、継続的なお取引に発展しています。
宇宙誕生の謎――「なぜ私たちは存在できているのか」という根源的な問いに挑む壮大な研究に、私たちの技術でお役に立てることを大変光栄に感じています。
今後の実験の進展を心から楽しみにしています。
【TDCの長尺金属箔 精密研磨】
TDCでは、100メートルを超える長尺テープ状金属箔の連続的な供給・研磨・巻取りを行う自動鏡面加工装置を独自に開発・運用しています。
- 表面粗さ Ra1.5nm、Rz10nm(SUS304の場合)の鏡面仕上げが可能
- 片面・両面の鏡面加工に対応
- アルミ、ステンレス、銅、ニッケルなど多種多様な材質に対応
長尺金属箔の精密研磨についての詳細は、下記ページをぜひご覧ください。
[精密鏡面フォイル/長尺金属箔精密ポリッシング]
精密研磨に関するご相談は、TDCまでお気軽にお問い合わせください。
【海外からのお問い合わせについて】
TDCでは、海外のお客様とのお取引にも豊富な経験があり、支給材はもちろん、材料の調達 / 精密加工 / 精密研磨 / 梱包 / 海外輸送まで一貫して対応することが可能です。
梱包・発送のノウハウについても長年社内で蓄積しており、海外輸送においても精密部品を安全にお届けいたします。
ご注文から納品までの流れについては「ご注文の流れ」ページもご参照ください。
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